32 手長足長むがすむがす、松代の国に、手長足長ていう、すばらしく大きい奴がいて、いや、農作物は荒らすは、ひったぐり、嵐を起こして台風にしたり、あるいは雲をみな、大きいウチワで、バフバフと叩いてやって、雨降らせねようにして、旱魃にしたり、まず、ありとあらゆる悪いごとさっで、ほとほと、民百姓が困ってあった。「いや、このあんばいだら、みんな死なんなねぐなる。困ったことだ」 向って戦うどしても足は長いし、手は長いで、体は大きい。勝負にならながった。 「いや、なんぼ智恵働かせでも、何とも困ったことだ」 て、みんな溜息ついっだ。ところがどっからともなく、一人の旅の僧がやってきた。ほして、いろいろ、話の中に、こういう風にして、こう困っているんだていうこと聞いだ。 「ほの、手長足長とやら、どこにいるんだ」 「磐梯山の山の方から、おもに来る。あっつの方に住まがいしているに相違ない。いや、その大きいごどていうたら、山のかげから顔出して笑ったり、怒ったりする顔はすざまじい」 山のかげから顔出してわかるぐらいだら、すばらしい大きい手長足長だったわけだ。したら、その坊さんが、 「よろしい、おれぁ命にかえでも、手長足長を退治してくれっから」 「いやぁ、後のたたりはどうなる」 「あとのたたりは心配ない」 ていうた。おれは、みな責任背負うがらて、まず藁をもつかむつもりで、 「んじゃ、お願いします」 と、こういう風になった。ほうしたら、そのお坊さんが何か呪文となえっだら、たちまち山の方から手長足長が走ってきた。ほして問答が始まった。 ほうしたら、お坊さま、足長さまだの、手長さまだのていうど思ったら、頭から呼び捨てにして、 「これ、手長、足長、きさま、大きくなられっか」 「そんなもの、お手のものよ」 ていうたけぁ、雲より高く、大きくなてしまた。 「ほう、そうか。んだげんども、大きくなるには大きくなったげんども、小さくはなれまい」 「そんなのも、お手のものよ」 たちまち、ずっずっ、ずっずっと小さくなった。何と親指ぐらいになったと思ったら、豆粒ぐらいになった。そしたらお坊さま、何か呪文となえて、法力でもってはぁ。ほして、会津の磐梯山のふもとさ埋めでしまったはぁ。ほして埋めた上さあがって、数珠で一生懸命拝んではぁ、ほしてさっさど立ち去ってしまった。それがら、ほの手長足長、出なぐなった。誰いうどなぐ、「あの人は、弘法さまでないがったべが」ていう話残ったけど。どんぴんからりん、すっからりん。 |
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