26 岩魚(いわな)和尚(おしょう)

 むかすむかす、この辺で雑魚()めるために、毒もみていうなした。
 毒もみていうな、何でやったがていうど、カラカもむと称して、山椒の皮をはいで、煮つめて、ほれを灰にしもわせで、それを一生懸命もずぐったわけだね。
 はいつ若者だ集まって、毒もみすんべていうて、相談になった。まずはぁ、山椒の木もいっぱい伐ってきて、ほして煮はだったら、ほこさお坊さんが来た。
「もしもし、あんた方だ、毒もむなだか。はいつだけは止めで(くだ)い」
「なしてだ」
「いや、釣ったり、網でとったりすんのは、かまわない。お互いに生きんなねのだから、それはええげんども、毒もんでしまえば、魚族が絶える。結局あんた方も命とりになるんでないが。それだけはやめてもらいたい」
 て、お坊さんが、こんこんとしてそう諭したわけだど。
 ところが若者はほだなこと、まず聞き入れないで、
「なぁに、構うことない。あそこにはすばらすい大きな岩魚いるていう話だ。やってみろ」
 ていうわけで、聞き入れないで、上さ行って毒もみした。ところがグランと引っくりがえって浮きた岩魚が目の下六尺もあった。何かそれが、ほの、昨日来たお坊さんの格好によく似た、斑点が出て、衣でも着てるような白いどこと黒いどこ出たりしてな。ほして、
「ああ、ゆうべ、わたしらを止めに来たな、あの坊さんに化けて来たな、岩魚のせいだ。こりゃいかん」
 ていうわけで、ほれから毒もみすることを、みんな止めること申し合せだったど。結局、大岩魚が毒もみやめらせることに成功したど。今でも魚族が絶えねでいるのが、ほのおかげだど。どんぴんからりん、すっからりん。
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