5 南山の馬鹿どの

 むかすむかす、あるところに、少々とんまな殿さま()だけど。大体、どこの殿さまも世間知らずで、馬鹿くさいのが通り相場であったど。
 一説によれば、あまり切れ者だと、長持ちしながったんだど。きらわれて毒殺されたりして……。
 んだから、知っていでも馬鹿なふりしている殿さまも居だけど。時に、ある日、農家から白菜二株献上されだんだど。一方は丸々どして大きい奴と、ほっそりして小さいやつとであったど。
「余が食して見るがら、漬けでまいれ」
 食べて見だれば、なんと大きい方がうまく、細い方がまずがったど。
「これ、三太夫、なぜ大きい方が美味で、小さい方がまずいのか」
「はい、小さい方は石灰と下肥が不足してございます」
「苦しうない、これに石灰と下肥を入れてまいれ」
 ていうたけど。
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