46 栗拾い

 あるとき、仲のええ二人が場所打合せて、栗拾い行ぐ約束した男の方が先に行って待っていだんだど。したれば彼女は旦那に追っかげらっで、二人できて目的果さんねけど。そこで一策を案じて一番高い木の天辺まで登って、怒鳴ったんだど。
「おーい、なんだ、人前もあるっだ、二人重なって、どこなぇべな」
 て言うたんだど。二人は上方見ながら、
「重なってなのいねぇぜ」
 て言うたんだど。
「いやいや、上の方がら見っずど、重なっていっど、ほら」
「木の上さ登って見ろ」
 ていうて、旦那ば栗の木さ登せだんだど。
「十尺ぐらい登って見たげんど、重なてなの見えねぇなぁ」
 て言ったんだど。
「いやいや、下の方だからだ、一番上の方まで登っど、重なって見えるなだ」
 五分もかがってやっと天辺まで登ったど。ほんどき、いきなり重なて呉だれば上から見っだ旦那、
「ここまで登ったれば、やっぱり重なて見える」
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