２５　星のはなし―北海道空知郡の人から聞いた話―

　むかしむかし、お星さまがお空にいた時、お星さまでも地上でも同じこと、お父さん星、お母さん星、子ども星て、いろいろあったんだど。
　ところが、一人のきかん坊の子どものお星さまが居て、それはそれはきかね。事欠いたイタズラばりした。星自ら通る道がみな決っていたのに、そのきかん坊は自分が通っどこでなく、人の通っどこふさいでみたり、あるいははなはだしくなっど、自分より小っちゃい星さぶっつかって、そいつば流れ星にして、地上さ落したりする。そういうお星さまいだったど。そのきかん坊ぶりが目にあまるものがあったので、お父さん星とお母さん星が相談して、「旅させろ」。そういうわけで、地球上さでも落してやったら、つうと（少し）は考え変るんでないかというわけで、地球さ、ある晩旅立たせたど。そして、きかね子どもの星がお父さん星、お母さん星から落とされるわけだ。すうっと落ちてきて、北海道のある川のほとりさ落っだ。して、北海道の子どもが、
「いやぁ、お星さま落っできた、お星さま落っできた。すばらしい大きいお星さまだ。見たればきれいだ。火事になんねぇか」
　て、みな騒いだ。
「いや、火事になんねげんど、すばらしいきれいなお星さまだ」
　ほして次の日になっど、お父さん星とお母さん星が可哀そうになって、
「どうだ、変りないか」
　て、お空から言うど、こっちからも暗くなっど、お父さん星とお母さん星に、光って、
「今日は変りなかった。おっつぁん、おかちゃん、悪がった。地球さ落とさっで、はじめてわかった」
　て。ほして、
「どうか、こんどあんなことしないから、お空に帰りたい」
　て、子ども星が言うたんだど。ところが、お父さん星、お母さん星が、
「もう少しの辛抱だ」
　ていうわけで、
「お前さええこと教える。お前落ちてった川の周囲のアイヌの村さ、隣の村から強いアイヌが攻めて来る段取りしった。んだからそいつ、すぐ村のアイヌさ教えて、それを防ぎなさい」
　て、こう言うた。ほうすっど村人が、
「きれいなお星さま落っできた。みんな行って拝(おが)申すべ、拝申すべ」
　て行ってみた。ほしたら、
「お前の隣村から、お前だよりまだまだ強いアイヌの酋長がお前の部落に攻めて来る。早く準備なさい」
　て教えてくれた。それ！というわけで、部落のアイヌたちはみんな弓矢よ、刀よと準備して、隣のアイヌが準備ととのわないうちに、こっちから打って出た。向うでは不意打くらって、ほうほうの態で退散してしまった。んで、
「あのお星さま、われわれの守り神だ。神さまだ」
　て、あがめらっだ。ほしてお空から、お父さん星、お母さん星がつよい光出してよこした。げんどもその息子星はだんだえ冷えて行って光らんねぐなったどはぁ、
「おーい、今日はどうだった」
　て、上から言うても、かすかな声で、
「何だか光る力がなくなりましたはぁ」
　て。んでも、
「お空さ帰んなくとも、地元の人の尊敬うけて、ここで暮すから、ただの石になるから」
　て、「さいなら、さいなら」て言うたって。んだから今でも、星のある川〈リコップ、オマナイ〉というのだど。そしてアイヌの村が栄えているんだど。どんぴんからりん、すっからりん。
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