17 団子の木

 むがしむがし、人間が上の方向いで、口さえ開いてると、上からいろいろな木の実、ポタンポタンと落っで来て、不自由しねがった。
 ところが、団子の木さは何年かに一度しか()らねがったって、実が。ところでその団子の木の実を食うなて、神さまから禁じられておった。なぜならば、それ食うどお前だは(ひたい)に汗して稼がねげば()んねぐなっから、苦労すんなねから、決して団子の実だけは食うなて、そういう風に神さまから教えらっでいだど。
 そして他の木さは、いろいろな実なっけんど、団子の木さは何年かに一度しか実なんねがった。
 ところが、蛇が来て、女衆さ教えたど。
「あいつは、神さま、()してお前ださ食うなていうなだかていうど、本当のこと言うど、ほの実()れっど、人間が神さまより偉ぐなんなだはぁ、神さまさ命令するようなんなだはぁ。んだから、はいつ恐れて神さまが食うな、食うなて言ってるんだ」
 ていうわけで、その男衆は絶対神さまの言うこと信じておったが、女衆は食ってみたればうまい。ほれ、うまくてなんねえ。何だか知恵の泉湧いてきたようだから、お前も食え、われだも食えていうわけで、みんなさ食せだ。ところが次の日から、いろいろな実なっていて、口さえ開いでいっど、満腹になる。だが実ていうの、限られた木にしか()んねぐなった。ほんで何とも仕様なくて、畑に芋、米、麦、そういうもの作って、額に汗して稼がねげば何ともはぁ、暮さんねぐなった。ほんで神さまの言うことは本当だったていうわけで、正月だけは団子の木さ、実いっぱい()っつけて、神さまさ、まよった(返済した)。その行事が正月十五日だった。
 そういう風にして、殊勝なことでまよって()だもんだから、神さまも、
「そういう風にして団子さして、おら方さ返して()っこんだらば、おら方ではそいつの代償として、ミズキとして水不足だけはさせねぇから」
 こういうこと、神さま約束したていうんだな。どんぴんからりん、すっからりん。
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