12 たわけ和尚とやぶ医者

 むがしむがし、ある村にお寺と医者さまいだけど。
 ところが二人は無類に仲がわるい。和尚が右て言うど、医者は左。お天気のことまで反対だった。
 ある日、医者からていちょうにお使いがきた。
「和尚さま、和尚さま」
 いつもの呼捨てと違って「様」つけできた。一通の手紙をよこし、ぜひお願い致したき事之有というわけで、和尚もいい気になって、ひょっこり、ひょっこり願われるままに、医者の宅に行ったわけだ。ところがしんみょうな顔した医者先生、
「お願いというのは外でもないが、実は私のところに娘が三人おってな、その娘に田を分けてやるんだが、どうしてもうまく行かね。一町歩の田、三人でていうど、三反三畝三歩三…てなって行って、割り切んねで残るど、ケンカの種だから、何とがお願いできんまいか」
 て願ったれば、和尚、ここぞとばかり、常がねのこともあるもんだから、
「えへん」
 なて咳払いなどしたぐらいにして、
「一町歩とは三千坪。んだから千坪ずつ分けでやれば簡単でないが」
 て言うたれば、
「なるほど、やっぱり」
 なて、意味ありげに言うた。
「うん、やっぱり世間で言うとおりだ。うん、わしのこと、そんなに評判が高いかな」
 なて言うたれば、
「なんの、たわけ((田分け))和尚、たわけ和尚」
 て言うて、それ半分ぐらい聞いた和尚、
「はかられた」
 ていうわけで、どんどんと帰って行った。
「あの薮医者め、何とかして…」
 て思っているうちに名案が浮んできた。
 数日後、こんどは寺の方がらお使いがきた。医者も計られまいと用心しながら、寺の屋敷に行った。
 ところが、和尚やっぱり平身低頭してお願いがございますと言うた。
「なんでござるかな」
「いや、実は裏山に何度竹を植えても、枯れでダメだ。何とか枯死しねで生きつく方法はないもんだべが」
 て、願わっだ。
「なんだ、ほだなことが…」
 自分がかつがれることなど忘れてしまって、得意顔で、
「ふらずとも竹植える日は蓑と笠」
 て教えたど。したれば和尚ここぞとばかり。
「ほうすっずど、先生みだいに〈薮〉になんべが」
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