8 亀の甲羅

 むかし、竜宮の乙姫さま、腹痛くして、(なん)たことしても治らね。みんな困ってしまった。ところが竜宮の古い書物見たれば、猿の生肝が一番ええて書いであったっけ。そこで、
「誰が一番、猿が島がら猿をつれてくるにええがんべ」
 て、話になったれば、何んというても、水の中でも岡でも、大丈夫な亀さんにお願いすんべぇて話がまとまって、亀さんが浦島太郎のときのように、猿が島さ行って、言葉巧みに猿をつれてきたところが、見だこともない、竜宮の部屋に目パチクリしながら眺めっだ。したれば、かげの部屋でひそひそ話しった。
「ああ、やっと乙姫さまさ猿の生き肝のませられっだなぁ」
 ていう話声聞こえで来たんだど。海の底の竜宮見せっからて、うまいこと言うて、
「おれから生き肝取って飲ませっどこだったのが」
 ていうわけで、猿が考えだ。
「ようし」
 ていうわけで、大声で泣き真似した。したれば、みんな寄ってきて、
「何した、まず」
 て聞いだれば、大事なもの忘れて来た。何忘れだて聞いで見たれば、
「肝、松の木さ虫干しして、そのままにしてきた。雨なの降るど濡れてしまうがら、取ってきて、ゆっくり見物させでもらいだいなだ」
 て言った。
「そうか、ほんでぁ」
 ていうわげで、すぐまた亀さのせで、猿が島さ生き肝取りにきたところが、陸に上がるより早く、
「こら、よくもおれば騙したなぁ」
 ていうより早ぐ亀ば目よりも高く差上げて、岩さぶっつけだんだど。んだほで、甲羅さヒビが割れて、今でも亀の子の背中は割れでいるなだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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