55 継母と白鳥

 むかしむかし、あるところに、おっつぁんとおかちゃんがいで、ほして、おかちゃんが病気して早く逝くなった。子ども八人いだ。一番下が女で、上七人が男だったて。ほして何とも仕様ないから、おっつぁんが後妻(あとかか)もらった。ところが、後おかちゃんが見たところぁええし、ちゃちゃとしてええようだげんど、根性悪れくて、子どもさ悪れくて、何とも仕様ない、ほして何だか魔法使いらしい。何だか、一番大きい()んつぁ、少し口答えしたらば、次の日、白鳥にさっで飛ばさっでやった。その次の日は、ほの二男、三男とはぁ、次々に飛ばさっでやってはぁ、ほうして、ほいつ、つげ口すんべと思うど、にらまれっし、恐っかないから、ほの一番()っちゃい子どもも、女の子ども()んねくているうち、七人とも白鳥にさっで飛ばさっでしまった。
 おっつぁんが、ほれ、おかちゃんのきれいなさ夢中になってるもんだから、子どもむずこいななの、二の次だったど。
 んだげんども、ほの一番()っちゃこい女の子どもは、兄さんださ会いだくて、なぜしたら会えんべがなぁて考えた。ほしてある日、なんとも我慢さんねくて、白鳥ていうな湖ていうどこにいるていう話聞いだから、ほっからずうっと行げば沼があっから、あそこらにいだべがなぁと思って、ずうっと行ったれば、やっぱり七匹の白鳥がいだっけて。して、一番妹行ったれば、傍さ寄ってきて、話語っだいと思って寄って()っけんども、魔法が効いていで、(なえ)ったて話にならね。こっちで言うことはわかるらしく、首下げっけんども、向うでいう七人の兄さんの言葉、全然わからね。
 ほだえしているうち、夜暗くなったはぁ。で、ほこさ泊ることにした。泊るったて寒くて何とも仕様ない。七羽の白鳥が妹ばクルッと巻いで()で、羽根で温めで呉で、一晩すごした。ほうしたれば枕神立って、白髪の仙人が現わっで、
「明日、お前はここにいる蜘蛛の巣の糸集めて、はいつさ、イヒン、イヒンて三べん言うど、蜘蛛の糸がどこまでも伸びっから、さいつで布を織って、ほして七羽の白鳥さ着物縫って着せんなね。んねど元の体になんね」
 て言うて、
「お前、はいつ出来っか。期間はたった三日しかないなだ。三日間にできっか」
「たとえ出ねったて、やって見ることだけはやってみるつもりしている」
 て、次の日なったもんだから、蜘蛛の巣とって来て、イヒン、イヒンて三べんしたれば、それ伸びっこと伸びっこと。ほいつばつむいで機織り始めて、ほして着物七っこしゃえで、ほの白鳥さ着せだ。ほうしたれば着せるより早く元の()んつぁんになった。次から次と人間となって、ほして、ほっから舟でずうっと戻ってきた。はいつ見っだけぁ、おかちゃんが、
「ああ、魔法破らっだ」
 ていうな悟って、自分が白鳥になって、パタパタ、パターッて、いずこへともなく飛んで行ってしまったんだけどはぁ。どんぴんからりん、すっからりん。
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