52 月・日・雷

 むかしむかし、お月さまとお天道さまど、雷さまと三人が旅した。ほして雷さま目覚ましてみたらば、お月さまもお日さまも居ねがったはぁて。女中さ雷さま聞いたど。
「お月さまとお日さま、なぜした」
 たれば、
「今朝早く、お月さまなの、暗いうち立ってはぁ、夜明けっど同時にお日さま立ってしまったすはぁ」
 て、女中言うたって。
「はぁ、やっぱり月日の立つのは早いもんだなぁ」
 て言うたて、雷さま。んで女中聞いだって。
「雷さま、雷さま、あなたいつ立ってござる」
「おれは、夕立ちだ」
 て言うたって。どんぴんからりん、すっからりん。
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