46 こうもり

 大昔、獣と鳥と戦争はじまったど。いやどっちも勝負つかねくて、永く永くかかった。して獣が優勢になって来っど、こうもりていう動物は、
「おれは足四本あっし、乳で子ども育てんなだから、おれは獣の仲間っだな」
 て、獣さ()じゃる。
 そだえしているうち、鳥が優勢になってくる。鳥の方ぁ強くなってくっど、
「おれは、羽根あっから鳥っだな」
 こんどは鳥の仲間になってしまう。ほして強い方さばっかり味方する。ほだえして、永年喧嘩しているうち、両方どちらからともなく、
「ほだえ喧嘩ばりしていらんねべな」
 て、講和が成り立って仲ええぐなった。ところがこうもりていうものは、鳥だ獣だて強い方さばり行ったもんだから、両方から毛嫌いさっで、
「お前なんか、おら方の仲間でない」
 獣から()っだ。鳥からも、「お前なんか、おら方の仲間でない」て()っだ。ほして鳥が行動すんのは日中、ほれから獣が行動すんなが、夜も目が見えっから、お前だ夜もすろと、こういうことになった。ほんでこうもりは、夕方わずかだけ出はって、虫食ったり、食いもの食ったりすんなねんだけど。んだから、喧嘩なったのさ、荒い方さ味方ばりして、ほっちゃ味方し、こっちゃ味方すんなば、〈こうもりみたいだ〉て今も言うのだど。どんぴんからりん、すっからりん。
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