36 狼千匹

 ほら吹きが、「村はずれまで行ったらば、千匹の狼が出てきた」て語った。
「千匹なていう狼、いんまいなぁ」
「いや、千匹ぁいねげんど、何でかんで、ありゃ五、六百匹いた」
「五、六百なて言うたら、山うずまるほどになんべな」
「五、六百いねごんだら、百匹はいたまな」
「百の狼、オーて音立てたら、サイレンよりまだ大きい音する」
 だんだぇ少なくなって、五、六十もいね。
「ほんて見たなだかよ、狼」
「いやいや、見ねげんども、何だか、ガサガサっていうたから、ほのぐらい居だったかと思って」て言うた。どんぴんからりん、すっからりん。
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