35 ほら吹きむかし、あるところに、ホラ吹きな人いで、「いやいや、すばらしい大きい蛇見てきた。胴廻り一間。長さ三十尺の大蛇見てきた」 「ほだえ大きい蛇、いんまいな。ほだえ長いな、いんまいな」 「ほんだらば、二十尺かな」 「いやいや、二十尺なていうなも居ね」 「んでは十五尺だ」 「十五尺なても、いねなぁ」 だんだぇ小っちゃくなって一間になってしまった。「んだら、お前、胴の周り一間、長さ一間ていうど、蛇は丸っこいべな」 ほしてホラていうこと一ぺんで分ったけど。どんぴんからりん、すっからりん。 |
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