28 小僧持念

 むかしむかし、楢下の宿さ、持念ていう小坊主いだった。
 ところがとっても、はいつ頓智もええし、頭もええ。村からとっても評判のええ小僧コだった。ほして村中では、何とか殿さまみてみだい、殿さま見た人ざぁ、一人もいね。ほういうわけで、
「こりゃ、持念どの、なぜか殿さま見る方法ないか」て相談した。
「いやいや、いと易いことでございます」
 て言うた。ほしてある時、持念が他の人と代って、殿さまさ年貢米背負って行った。ほうしたら、その当時とっても鷹狩りが流行(はや)ってだ。
「これ、小僧、小僧、お前のとこの奥山の方と聞いているが、お前の方に鷹いねが」
「はい、畏まりました。裏の山さ鷹が巣かけて、せっせと餌運んでいっから、よっぽど大きくなった」
「そうか、ほの鷹を取りに、余が参るから案内いたせ」
「はい、かしこまりました」
 ほうして約束して帰ってきて、
「村の衆、いつのいつか、殿さまがお出になる。みんなとくと御覧になっどええ」
 ていうたところが、無礼討ちになのされっど、部落から縄付き出したり、死亡者出したりすっど悪れ。何とかこいつ止めでもらわんなねていうわけで、また小坊主んどこさ相談に行った。
「いやいや、こういうわけで、部落の者が相談した結果、こういう風に一決したから、お前の智恵でやめてもらわんねが」
「いや、それもいと(やす)いごんでござります」
 て、けろっとしたもんだ。で、また年貢背負って行った。殿さまお目通りかなって、
「どうだ小坊主、鷹は大きくなったか」
「はい、大分大きくなって毎日ピィヒョロロ、ピィヒョロロて鳴いております」
「おい、小坊主、それは鷹でなくて、トビだ。行くのやめた」
 て、やめたけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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