27 日本武尊

 むかしむかし、日本武尊さまていう人が、天皇陛下の命令でエゾ征伐に行った。ところが、丁度春先なもんだから、いろいろ戦争してるうちに、賊軍から火吹っかけらった。あっちからもこっちからも、放火さっで、ほしてドンドン、ドンドンその火がせまってきて、あわや日本武尊さま危くなった。ほん時、腰の名刀抜いて、草をなぎはらった。したらば、あにはからんや、今までこっちの方さ吹いっだ風が、逆に変って、賊の方さどんどん、どんどん吹いて、賊がたちまちやらっでしまった。その刀が、今までアメノムラクモの剣て言うたげんども、ほん時から、クサナギの剣で命名したんだけど。
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