25 因幡の白兎むかしむかし、因幡の国さ兎いだっけど。ほうしてほの兎が何とかして、向うの岸さ海渡って行ってみたい。んだげんども泳ぐには泳がんね。何んた恐っかないもので殺されっか分んねがらって、恐ろしいも恐ろしい。何とか向うさ行ぐ工夫ないべかと思って考えた。ほしたれば、ええこと考え浮かんだ。ワニザメば並べて、ほの背の上を行ぐとええて。「んだら」ていうわけで、ワニザメさ相談した。「ワニザメ君、ワニザメ君、海のお前の数が多 はいつ聞いたワニザメは、「ええがんべ」て言うわけで、ずうっと並んで、こっちの岸から向うの岸までワニザメ並んだ。得意になって白兎は、ほこピョンコピョンコと跳ねて向う岸までついて陸さ上がってから言うどええがったげんど、いま一歩という陸さ上がるっていうとき、 「何だ、お前だ、おれに騙さっだんだ。数なの、白兎なの集める気なの何もないなだ。お前の背中渡って、向う岸さ来 したれば、一匹のワニザメはガブリと食 「何しった、兎」 「こういうわけで…」 て言うたれば、 「ああ、そうか、ほんではお前、海の水さ入れ。んだどたちまち毛が生える」 はいつ聞いて、兎は海の水に入ったらば、痛くて痛くてなんね。ビリビリ、ビリビリて、塩っぱいもんだから。ほうしてキャンキャンて泣いでいだらば、袋かついだ神々さまのいろいろな荷物背負った一人の、また神さま居だった。したればその神さま親切で、 「お前、ほだごどして駄目だ。きれいな水で体洗って、して、蒲の穂さ転がれ、んだどええから」 て、ほうしてほういう風にしたらば、やっぱり元の白兎になったけど。どんぴんからりん、すっからりん。 |
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