24 猿の尻はなぜ赤い

 むかしとんとんあったずま。
 ある村に、東の家と西の家のあるとこあったんだど。
 ところが東の家ざぁ、すばらしい旦那衆で豪家で、ほして物持ちだ。ほして西の家は貧乏でその日暮し、やっと暮していんなねがった。ところが西の家には子どももいね。年寄ってしまったはぁ。東の家には家族はいっぱいいる。使用人はいる。ほこさ一人のみすぼらしい旅のお坊さん来て、
「何か一つめぐんで下さい」
 て言うたれば、東の家では、
「お前のようなさ呉んな、おらえの家には何にもない」
 て言うて、一言のもとにはねつけてしまった。西の家では貧乏してでも、情深い家なもんだったから、
「ほんでは、おら家には米なて立派なものないげんど、そばがき....ぐらいだらば、進んぜんべ」
 ていうて、ほこで旅のお坊さんさカイモチ練って御馳走した。ほうしたれば夜になったれば、ほのお坊さん、
「お宅さ、こだえお世話になったお礼すっだいげんど、何ええ、銭ええか、まず何ええ」
「いや、おら()では銭なて、ほだえ望まねげんども、二人はこだえして一生懸命稼いできたれば、年取ってしまって、毎日(こわ)くてなんねぇから、若くなることできねぇべか」
 て言うた。
「それは造作ない」て言うたけぁ、何だか旅のお坊さんが荷物の袋から黄色い粉出した。ほして、
「かいつで、お湯立てで入れ、二人一緒入れ」
 て言うたど。二人はその中さ一緒に入ったれば、何だか、じんつぁの腰のびるような気してきた。ほして口の周りもそがゆいと思ったれば、髭ぁみなポロポロ落っでしまって、ほうして今度、シワもなくなって、つるっとなったし、ばんちゃの腰も伸びてきた。
「あららら、ありがたいもんだ」
 二人はとうとう若くなった。ほして、旅のお坊さん言うには、
「東の家さ行って、火種もらって来い」
「はい」
 て言うて、次の日、
「こういうわけで、どうか火種切らしたから、火種()でけらっしゃい」
「なんだ、お前どこの者だ」
「いや、おれは西の家の者だ」
「西の家の親父だら、いまっと年取ったべ」
「実はこういうわけで、旅のお坊さんに、(こわ)えくてなんねぇったれば、ほんでは若返りの薬呉っからてっていうわけで、こだぇ若くしてもらった」
「ばんちゃもが」
「ばんちゃなの、おれより若いようだ」
「はぁ、ほんではほの薬、おら家さも呉ろ」
「んだら、お坊さんに聞いて見て」
 て、家さもどってきた。したればそのお坊さまが、
「よしよし、この薬もって行って入らせらっしゃい」
 て、ほの薬もって行って()だ。ほうして一等最初、旦那と奥さんが入った。ほうして上がって、ほの後さみんな入った。みんな一緒に入んないどわかんねて()っで、みんな一緒に入った。ほうしたれば旦那さんと奥さん、猿になって、他の奴は羊になったり、兎になったり、牛になったり、みな動物になってしまったはぁ。
「こりゃ困ったこと始まった」
 と思って、何とも仕様ない。魔法が効いて動きがとんね。はいつごしゃえで、ほの猿になった旦那と奥さんが、夜な夜なかかりに来る。西の家のじんつぁとばんちゃ、若くなったなさ、
「こういうわけで、かかりに来るず」
 て言うたら、旅のお坊さまさ言ったれば、
「ほうか、んだらば、真黒い石、裏さ二つ焼いで置け、焼いて並べておけ」
 ほして、黒い石は囲炉裏で焼いで並べっだれば、東の旦那と奥さんがきて、はいっちゃ尻かけた。「あちちち…」て言うて、尻、焼けぱたした。ほれから猿の尻ざぁ、赤くなったなだど。どんぴんからりん、すっからりん。
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