16 笛吹き童子

 むかしむかし、ある山奥に不思議な少年がいだんだけど。不思議な少年というのは、何年かに一度、山から笛鳴らしながら降っでくる。ほうすっど、秋さかなの、取ってきた茸はみな追っかけて行く。山羊の子も羊もみな追っかける。ほしてええ者みなほの少年に追っかけでってしまう。恐っかない少年だって恐れらっでいた。何年に一度来っか分んね、不思議な笛鳴らして来るんだって。
 ところがある年、その少年が現わっだ。ピーヒャララ、ヒャラヒャラと草笛のような鳴らして来っど、ねずみまで追っかける。ほしてやっぱり取ってきた茸みな、はいっちゃ追っかけた。
「あらら、不思議なこともあるもんだ」
 て、みんな見っだ。ほうしたら町で喧嘩はじまってだ。ほの不思議な少年の声聞いだれば、喧嘩やめてしまった。うっとりしてしまった。ほして、百姓さ年貢取立てに来た。きびしい役人も、何だかにこにこ顔になって、取立てしねぐなった。不思議なこともあるもんだなぁと思って、ほしてずうっとほの行列見っだれば、茸もええ茸でなくて、腐れかかった茸をみな連れて行くのだけど。ほして世の中のいろいろの争いごととか、そういう風な搾りとりなていうの無くするために、ほの不思議な少年が山から現われんなだけど。
「んだらば、ほの茸は」
 て言うたらば、茸は松茸であろうと、シメジであろうと、スス茸であろうと、ええ茸は連れて行かんねで、悪れ、腐れかかった茸だけ、そいつを食うど中毒するもんだから、それば連れて行くのであって、ええ茸は連れて行がねがった。ほして人間に害するねずみとか、悪れものをつれて行くのだった。んだから不思議な少年というものは、村のためになる少年だったこと、始めてわかったんだけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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