15 三枚のお札むかしとんとんあったずま。あるところに、和尚と小僧といだった。ほして小僧っこはある秋も深まってきた頃、 「和尚さん、和尚さん、おれば栗拾いやってけらっしゃい」 「ならん」 「何とか栗拾いたいから、一つ、どうか、和尚さん、栗拾いやってけらっしゃい」 「ならん」 何べんも「ならん、ならん」て言っでも、小僧が言うもんだから、 「ほんでは仕方ない。行って来い。しかし山には何 て、三枚のお札貰って、ほして山さ行った。ほうして行ったれば、栗は落っでで、あっち拾い、こっち拾い、ほっち拾い、こっち拾いしてるうち、とっぷり陽暮れてしまった。たまに行ったんだから、うれしく一生懸命和尚さんさいっぱい栗拾ってってと考えているうちに、 「こりゃ、日暮れてしまった、こりゃ困ったこと始 真暗で、まず鼻つままっでもわかんねほど暗い晩であった。ほだえしているうち向うの方にポカッと赤い灯が見える。 「あそこさ行って、一晩の宿、厄介なっか」 と思って戸を叩いた。ほしたればばんちゃ居っけ、 「ばんちゃ、ばんちゃ、今晩一晩泊めてけらっしゃい」 「泊れ」 見たれば、普通のばんちゃと違って、何だか様子変だと思っていたら、ほいつぁ鬼婆だった。ほして、はいつばいきなり戸棚さ入っで、包丁砥ぎ始めた。 「こりゃ、殺さっでは大変だ」 と思って、 「ばんちゃ、ばんちゃ、小便出る」 て言うた。 「小便なの、ほさ、たれろ」 「ばんちゃ、ばんちゃ、ばっこ出る」 「ばっこでは仕様ない」 て言うんで、綱つけて便所さやった。ほうすっど、ほの小僧っこは、賢こいもんだから、便所の柱さ綱しばりつけて逃げた。ばばは一生懸命、「まだだか、まだだか」て言うたら、「まだだ」ていう。あんまり長いから、しびれ切らして鬼婆行ってみたれば、逃げた。 「あの野郎、逃げたな」 て言うど、追っかけてきた。ほして、どんどん、どんどん逃げだげんど、いまつうとで押えられるようだ。 「ああ、和尚さまにお札もらって来たっけな」 て言うわけで、「砂山出ろ」て、お札まいだれば、砂山出た。登っどズズズ…くずれる。また登る。ズズズ…。ほんでも鬼婆、食 「和尚さま、和尚さま、鬼婆だ、鬼婆だ。鬼婆に追わっだから助けてけらっしゃい」 「おお、ほうか。んだから行ぐなって言うたんだ。仕方ない。んだらこの木の箱さ入ってろ」 木の箱さすとんと入った。ほうしたけぁ、間もなく鬼婆追っかけて来て、 「我鬼コ来ねがったが」 「来ね」て言うた。和尚は、 「お前は鬼婆だて言うけぁ、どうだ大きくなられっか」 「なるい」 「大きくなってみろ」 和尚さん言うたれば、ものすごい雲つくような鬼婆になった。 「ほんでは、ちっちゃくなるいが」 「なるい」 「どこぐらいまでなるい」 だんだえ、だんだえ小 「小僧、腹揉め」 ていうわけで、小僧は木の箱から出はって、和尚さまの腹もんだれば、尻 |
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