13 ねぎ違い―愚か村話―むかしむかし、この百姓の状態を見廻りに来る役人がいだったど。ほんで、その役人のうちにも、性のええ立派な役人と、性 ある村さ、何時の何日 「はぁ、何御馳走したらええがんべ、まず、御飯 て、みなで相談したらば、「ソバええべな」ていうわけで、「んだれば、タレ何故作る」「タレはこうこう、こういう風にして作ったらええべな」 「はぁ、はえつはええがんべ」 ていうわけで、ソバでお招びすることにした。ほうしたれば、そこさ役人が来て、ずうっと田畑見廻して、ほしていよいよ昼間の御馳走になった。ところがソバ出て、 「タレ、よし。ソバよし」 まず、うまく食ったげんど、薬味がなかった。 「これこれ、薬味がないぞ」 ところが、薬味ていうの、誰も知しゃね。 「ほ.んでは和尚さまさでも行って聞いてみっか」 て、聞いてみた。ほんでもわからね。 「これは困った、その薬味ていうな、どういうもんだか、聞いてみるに越したことない。聞くはいっときの恥ていうもんだから…」て、 「お役人さま、お役人さま、薬味ていうのは、何ば言うもんだ」 「ああ、それはネギだ」 「ははぁ、ネギって言えば、法印さまだ」 ていうわけで、法印さま招ばりに行った。ところがほだえしているうちにはぁ、食事終ってしまったはぁ。 「昼間の食事終ったから、ネギはすぐ生き付くから、埋 て言うた。 「はぁ、法印さまば生き埋めにしろて言うのだべが、来方 て、法印さまさそのわけ語ったれば、法印さま、 「何だ、人ば生き埋めにしろなて、ほだなことないわけだ。とんでもない話だ、おれ行ってみる」 ていうわけで行った。ほうしたらその役人が言うには、畑のネギで、法印さまは「禰宜 「ほんではよかった」 て言うたば、 「ほんでは、下がってよろしい」 て、役人が言うた。下がってよろしいて言 |
>>蛤姫(上) 目次へ |