11 欅の和尚

 むかしむかし、ある村にお寺さまあって、そのお寺さまにすばらしい、雲抜くような欅の木あった。
 ところが、そこの和尚さまはすばらしい位持った和尚さまだった。了角和尚、了角僧上て、了角て名付った人で、「僧上」ていう位持ってだ。ところが誰も、「僧上さま、僧上さま」ていう者が一人もいなくって、「欅の和尚、欅の和尚」て言うがった。すばらしい欅、三里四方からも見えるような大きな欅なもんだから、みんな通称「欅の和尚」て言うた。僧上さまて一人も()ねな不服で、不服でなんねぇがった。
「ははぁ、野郎べら、この欅の木あっから、僧上さまて()ねなだ。よし、この欅の木切ってしまえ」
 て言うわけで、庭師、木挽きたのんで伐りかかった。ところが庭師も木挽きも、
「いやぁ、和尚さま、この欅だけ切んねようにして呉ろ、まず部落のシンボルみたいなもんだ」
「ほだごど言うたて分らね、切って()ろ、切って呉ろ」
 て頼まっで、切ることにした。ほして切ったれば、こんど「僧上さま」て言うがと思ったれば、切ったれば、こんど、「切株和尚、切株和尚」て、みんな言う。
「はぁ、切株和尚ではうまくない、この切株、すぱっと取ってしまわなくてはなんね」
 て、切株、こんど全部掘り起こして取ってしまった。したれば大きい穴出てしまった。こんど、ほりゃ「穴の和尚」なて()れっどなんねていうわけで、こんど一生懸命村人足を頼んで、ほの穴埋めはじめだ。きれいに埋めたから、こんど「僧上さま」て言うがと思ったれば、やっぱり最後に、「穴埋め和尚、穴埋め和尚」て言うて、「僧上さま」て言うな一人もいねくて、一生終るまで「穴埋め和尚」だったど。どんぴんからりん、すっからりん。
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