9 ねずみと和尚

 あるところに、とってもねずみば可愛がっている和尚さまいだんだけど。ほしてほこらさ招ばっだり、何かえしても、半分以上ねずみさ御馳走して、ほしてねずみば大切にしているんだけど。
 ある晩のこと、大分寒くなったから、栗でも焙って食うべと思って、ほして檀家から貰ってきた栗、囲炉裏さ焙り始めた。丁度そのころ世相が悪くなって、大分泥棒だの強盗だのて流行(はやっ)ていた。ほして村人たちもそれにほとほと手を焼いていた。
 ところがその晩に、泥棒二人が和尚さんの家ねらっていだ。ほだなこと全然知しゃね和尚さま、まず栗焙って、
「今夜もこりゃ、そろそろ友だちだ出はて来るでないべか」
 と思っていた矢先に、そろりそろりと来たわいなて、ねずみが出てきた。ほだえしているうちに、泥棒だ、ほれ、和尚さんのお寺さ来て、節孔から覗いっだった。ほうしたれば、和尚さま、
  おんちょろちょろの孔のぞき
  またもや仲間が現われ候
  ほれほれ、ほりゃ手掛けた
 こういう風に言うたれば、ほの泥棒二人がきて孔のぞきしった。ほして別な来たれば、また、「仲間が現われ候」て言わっでびっくりした。ほして箪笥さ手かけて盗っど思ったれば、「それそれ、手をかけた」て()っだ。はいつぁ、お寺の和尚さんの方では、ねずみが栗さ手かけたこと言った。ところが泥棒がタンスさ手かけたな、その通り()っで、
「いやいや、こりゃ大した和尚だ、うしろ向いでで暗いどこみなわかんなだ。こだな和尚な盗んだんでは、なぜされっか分んね」
 て、ほとほと手焼いではぁ、一目散に逃げて行った。
 ほの話、村中さ聞えで、ほして村では、 「ほんでは和尚さま、泥棒よけのお経も知ってだんだ。ありがたい和尚だ」
 て、ほして、
「泥棒よけのお経、おらえの家さも上げてけらっしゃい。おらえの家さも上げてけらっしゃい」
 ていうわけで、ねずみ可愛がったおかげで、和尚さま大変お金持になったけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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