3 梟と烏の仲昔あったけど。ずっと昔は梟の商売は染物屋だったもんだど。ある時、烏ぁ訪(た)ねで来て、「俺の羽根ば誰にも負げなえ、きれいてきれいに染め直して呉ろ」て頼ん だけど。昔、烏、まだ神さまがら白い色の羽根さづがたもんだっけども、これだどあん まり汚れが目立つし、地味過ぎっさげ やんだ、どて、洒落気出したどこだったべちゃ。 染物屋が言うにゃ、「きれいて言たたて、何色が良んだが、いろいろ好(す)き好 (この)みもあんべし」て、きき直すけど。ほしたば、 「天下一奇麗によ、例えば何処にも見らんなえよな、ほして誰も持てなえ、見だ ら直ぐ俺だて判るよな。ほげた色なえがや。光るよな色なら、なおさら良えし」 て言うけど。 そうは慾張て言わっても、おいそれど良え工面わいでくるもんでなえ。「いっそ、 こっちさ任へでくれっこんだら、ゆっくり考えで何とかしてみんども」て、染物 屋渋っけど。 ほしたら烏まだ、「大体今言たようならば、任へっさげて、なじが頼む」つけど。 さぁ、そこで考えに考えだあげぐに出来したなじゅあ、今の烏の羽色だど。「烏 のぬれ羽色」で言えば黒光するんだし、ほれにこの色なら、ちょっこらさっと汚 れも目立なくて、烏も大喜びすんべど、自信もて仕上げてくったけど。 烏も出来上り気に入って、他の鳥達さも得意なて自慢しったけど。でも体中ど こもここも真黒けでは、本当ン所、誰一人賞めで呉れる者居なぇじょん。まるで 山寺のお小僧さんの破れ法衣(ころも)みでえだ。前の方がずっと良がったて言う者(な)ばりだけど。 烏ぁこれ聞ぐど ごしゃげ 今でもこの時の恨みば根にもて、烏ぁ梟どこ真剣なて追(ぼ)っかけまわすし、梟も おっかなくて、昼間うぢ、胴樹(どらき)さかぐっていで、夜なて鳥あ とや |
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