2 時鳥の兄弟昔あったけど。或所(あっど)さ、兄と弟ど二人ばりで暮してる家あったけど。兄まだ弁当もちで山さ稼ぎ行ぐど、 せば弟は家さ残て家のまわりの仕事してっけど。弟じゅあ、何時も兄どご大事に上げておぐ、気のええ男でな。今日も兄ぁ難儀 して帰て来んべさげどて、来たらすぐ飯(まま)にするつもりで、早っから炊事(しんめえ)出来して待ぢったけど。 背戸の山から採て来た山芋ば煮でだど。良え所(どご)は でっちり 兄さ てんこもり なるほど、芋を食てみりゃ んめぇ 何(なえ)だ彼(かん)だて、あだりちらして、とうど、ええ所まぐらたがどうか、腹裂いで見りゃ判るごどだて、やっちもなえ(無茶)事言い出す始末なたけど。言争(いけえ)のあげぐにゃ、兄ぁ頭さきてしまては、弟の腹さズブリ包丁刺しこんだけど。 ほしたら、腹ン中から出はて来たもの てば たった一人の弟ば死なしてしまてからは、なんぼ悔びて悔み切れるもんでない。 ほれがらじゅもの、がっかりがおて、弟恋しいどて泣いてばりいるもんださげ、 とうどう鳥こなてしまたけど。 この鳥こまだ夜昼なぐ、淋しぐなっと泣いで飛びまわんなだど。 弟恋しちゃ ポト裂けたか ポト裂けたか 今でも時鳥は弟の供養に、八万八千八百八声、喉から赤い血ば吐きながら鳴き 歩ぐなだど。 どんぺからんこ なえけど。 |
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