19 折 れ 秤
正月の二日の日は、前から〝店開きだったべ〟な。鴻池の店開きのとき、秤の一番大切なの折れだったど。その旦那は、
「いやいや、おれは商人はおさまった。秤折れるなんつぁ、ないもんだ」
といって、おかたさ言うたど。
そうしたば、賢こい女だから、
「旦那さま、吉相、それはええことだ、これはよかったな、大阪では、折れ秤と鴻池は一番になるしるしだな」
と、こういう風に言うたど。旦那は喜んで祝って、それから大したことになったど。
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