17 兄弟と貧乏神

 むかし、二人兄弟が親に死なっで、親は財産二人で分けて、みんな安泰に仲よく暮せよと、そして親の死んだ後で財産を二つに分けたところぁ、弟の方は子どももいないで貯めるいっそう…。そして兄の方はというじど、子どもいっぱいできて、働いても働いても難儀していんなね、何とも仕様ないから、弟さ行って願って来っかなぁと思って恥をしのんで行ったところが、
「おれが誕生日は何時(いつ)の何日(いつか)だ。そんとき兄は来て呉れたらええでないか」
 ぐいと坐って、
「そうだなぁ」
 というて帰って来て、おかたさ話したところが、
「行かねでもいらんねごでな」
 と、おかたは他から着物なの借りて来て、二人で行ったど。まず他の人なども招んで祝いをしたど。その兄は貧乏してるもんだから、見ないふりして、他の人さばりそれそれして、恥かいて、なんぼ兄弟だって情ないもんだ、なんぼ貧乏してっど、こういうもんだと思って、来る途中で、
「おれは貧乏の神だ」
 という音する。
「あるところには、あまり働いて、ぶっつからっだりなどばりすっから、そこにいらんねくて、福の神のこと聞いた。福の神は山のところにいっぱい宝を埋めっだということ聞いっだ。こんどはお前がたどこから離っで行かんなねくなった」
 と、目に見えないげんど話が聞えたど。
「子どももいっぱい育(おが)したんだし、おれもどこさか行かんなねはぁ」
 そしたところが、
「おいおい、福の神の場所、教えて呉ろ」
 といったところが、見えないげんど、知らず知らずそこの山の方さ行ったど。そしたところが、そこに岩あって、岩を開けられるような気持したけど。んだからそこの岩さどんどんして開けてみたところが、やっぱしいっぱい宝の金銀入っていたけど。
「貧乏の神も、この金を、まず見てみろ」
 というて、その金を集めて、貧乏の神が入ったと思ったとき、バエンとそこの蓋(ふた)して、わらわらと逃げて来たど。こんどは子どもらにだって腹くっちくさせて、ほがえに人や兄弟さ頭下げね。あがえな兄弟なんざぁあるもんでない。それにつけても、まずおらだ働いて漏(む)ったどこの家を拵えたり、いろいろして、こんど安泰になったど。そうしたところが、弟は子ども持たないもんだから、兄どさ来て、
「まず、ええあんばいになったなぁ、あんだ働いたから、こういう風にええぐなったなだ」
 と、いろいろな話を語ったところが、
「福の神や貧乏の神などあるもんだ。おらだんどこさ貧乏の神喰付いていらんねと、こういう風なとこ教えらっだど。まだ山に残っていたかも知れねげんどなぁ、金は」
 というたところが、弟の方は金銀残っていたと言わっだもんだから、「兄、教えろ」と入って行ったところが、貧乏の神に抑えらっで、今度はドンドン弟が貧乏の神に喰付かっだど。
 んだから、人は助けられっどきは、お互いだど。

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