14 二人兄弟あるとこに、男の子二人いて、親さ尽されるだけ尽したもんだから、銭もなくなって、親がとにかく生きらんね。「おれが皆使いはたしたげんども、蔵の中に宝物が入っている。その宝物を分けて、お前だ智恵をもってその宝で、どうにも暮して行け」 兄に石の臼をくれて、弟にはヒョウタンと棒をあずけたそうだ。そして親は死んで、親の葬式終して、 「おらだ、宝をもらったから、智恵でええあんばいになれと、親から言わっじゃ。おらだ、なんぼ智恵あるか、おれはこの臼背負って行くし、お前は棒とヒョウタンを持(たが)って旅して、なんなもんだか行ってみたらええんねが」 と、こういう風に語って、二人は朝出きて、そして山を越えて行ったところぁ、兄はこの道さ行き、弟は左道を行ったど。 兄の方は、山越え野越え、山越え行って山の途中で暗くなった。 「さぁ、こんど里に出きるまで容易でない、まず木の上さあがって泊っかなぁ、臼をここさ置いてここさ寝っじど、臼なの親にもらったの、盗まれっどわるい。何わるい者なの来ないざぁない」 と思って、木の上さ臼背負って登って、ええあんばいに、臼とわれと寝ていたど。そしたところが、何か夜中に火焚く者いたど。そして丁度その下さ火焚かっだもんだから…。 そして今度、四人集まって銭分けだったど。これは盗賊だな。親方はまず、ただそこに火焚いてて、 「銭別けろ、おれどさもっといっぱい分けろ」 というごんだけど。まず唯居て、そこぁなんぼ親方だって分けることはできないと、片一方はいう。 「おれ教えたから、それくらいなことされるもの分けろ」 というごんだけど。そしてその親方と喧嘩始めたど。そうすっじど、片一方の方では、喧嘩してどっちか負ける風だったら、おれはこの金を持(たが)って行くべというような風だけし、片一方どっち負けっかなぁ、こりゃ。と思って、首をまげて見っだ風だけど。そしていう内に、その木さ、ドダェン・ドダェンとぶっつかって喧嘩して、ぶっつかったところぁ、臼は落ちて来て、喧嘩して下になったりして転んでいた頭さ、落ちて来て二人とも死んだごんだど。そしたところぁ、二人が魂消ているうちに、小便、知らず知らずむぐったごんだど。 そしたところが、火が消えて、煙(けむ)は上さ上がる。して、アクショ・アクショして、ドダリ、そこさ落ちたど。そしたば、 「これぁ、天から石は落ちて来る。雨は降る、化物は落ちて来る。おらだなじょになっか分んねから、さぁ逃げろ」 というもんで、二人は逃げだど。 朝になったら、帰って来んべなと思っていたところが、その気色はない。それから上衣を脱いでその金をみんな集めて、家さ帰って行って、 「これはこれは、おれはこれで成功だ」 と思って、家さ帰って家を建て直す、そしてこの弟の方は、ええ道だなぁと思って行ったところが、墓地さ入って行ったど。 夜になったもんだから、墓地さ寝て、石塔を枕にしてたところが、夜中に「オイオイ」と起こす者がある。起こさっだから、目覚まして、人間の声だなと、チョイとそこで気付いて、 「こりゃ、何されっか分んねから、おれは人間でないと答える方がええな」 と、頭さ考えたもんだから、 「おれは人間でない」 「そうか、手寄こしてみろ」 といわっだから、こんど棒を突出(つだ)したら、 「ほほう、随分にむかし死んだもんだなぁ、随分に細くなっていたなぁ」 というもんだげんど。こんど、 「頭突出(つだ)せ」 というので、ヒョウタン突出(つだ)したば、 「ほう、全く、なんぼ久しいもんだかな」 というごんだけど。 「ほんじゃらば、おれぁまず、ある村の役人の娘の魂抜きに行くとこだ。ほじゃ、おれにお伴しろ」 といわっで、 「あまりええ」 と答えたど。そして、 「しっかり握れよ、その棒突出すから…」 というたところぁ、なんだか風船のような心したけずぁ、ふうっと飛んだかと思ったところぁ、町役人の門のところさ、ぽいと落さっだけど。そして、 「この門さ入って行って、おれは魂を抜いて来っから、待ってろ」 といわっで、そこにいたところぁ、 「この袋は魂だ、お前はまた人間に返りたいときには、魂で返ればええし、またこの魂を入れれば生きるし…」 と。 その話は夢だかと思っているうちに、話語ったものは見えなくなった。そのうちに、この家の中で叫び声はする。泣き声はする。ヤァヤァヤァヤァという音はする。 「さぁ、やっぱし、娘は何とかになったな」 と聞いて、そのうち医者が呼ばれ、なにやかやと、医者が篭などで来るという。 「ここにいては本当でないから」 と思って、少し向うにいて、様子を見っだそうだ。 「とにかく医者は分んねぇ」 という話が聞えたど。そうすっじど、 「おれが生きっだし、あれさ生き返らせる方法はこの袋だべがら、おれは医者になって、生き返らせてみんべな」 と思って、その袋を持(たが)って行って、 「おれが名人の医者だ」 と、外にいた男さいうたところが、 「御主人さ聞いて来る。こういう娘は死んだそうだが、おれは生き返らせる名人の医者は聞きつけて来て下さったからどうだ」 「ほんじゃ、早く、まず寄せろ」 というもんで、寄せた。 「ほんじゃ、娘寝っだどこさ誰も入らねでもらいたい」 といった。そしてその袋を口にさして、 「さぁ、早く生き返ろ、早く生き返ろ」 と、袋の空気をつめるようにしていたところが、段々と、手押えてみっど、手は温かくなる。そして目ぱっちり開いて、 「なんだべな」 なんていう。誰もいないようだし、台所で随分に人もいたようだなぁ、なんて、すぐ音立てっだど。 「こんどは大丈夫だ」 それから今度、みんな呼ばって、生き返ったからと喜ばっで、「こんな先生はいない。ほんじゃらば、何もお望み次第のこといって呉(く)ろ」 といったところぁ、 「おれはこの娘欲しい」 と、こう言うたど。そう言うたところぁ、 「娘とて、外さやることできねから、どうかここの聟になってもらいたい」 といわっで、その家の後継いだど。 |
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