9 坊さんのなまけおかたある坊さんに、なまけおかた持って、なんともまず、かまわず働いてばり居んなねような坊さんがいだったど。あるとき、そのおかたが言うには、 「おれは病気だげんども、お前働き悪(わ)れもんだから、おれぁ医者さも掛らんね。そんな働きの弱い者は困ったもんだ」 というもんで、坊さんさ言う。そして坊さんがどこさか托鉢にでも行って、そしておれのところ医者さでも掛けてもらわんなね、とおかたに言わっで、坊さんがある時、托鉢にでも行って貰って来る他ないべなと思って出掛けたど。そしてそっちこっち歩って、たくさんの金も貯わえたし、また袋さ米も頂いたからどて、帰って来る途中で山さ昼寝したところが、水も飲みたくなったど。そしてその袋から水飲むのを出して、水飲みに行ったど。そしたところが、蛇が知らねうちに袋さ入っていたど。それ知らねで背負って来て、なんだかどんどんと町でお堂の建っているところさ入って行く人がいたので、 「何事だ」 と聞いたところが、 「ある大和尚の説教で、うんとここらの人は盛にお聞きして仕合せになっていた」 という話聞いたもんだから、 「おれも聞かせてもらいたい」 と思って、その坊さんも入っていったど。そうしたところが、いろいろな話聞かせておくやって、その坊さんどこさ指差して、 「お前背負って来た袋に蛇入っていたから、おれどこさ持って来い」 「蛇は、おれは背負ってきたわけはないなぁ」 と思ったげんど、その坊さんがもって行って開けてみたらば、黒い蛇がノロノロと出はったど。 「この蛇はお前、あまりええぐないおかたに持って、とにかくなんぼ働いてもわかんねがら、この蛇はおかたの生命をとってくれるということで、入っていたのだ。ほだから、この蛇さよくと聞かせてやるから、お前のおかたもおれの説教を聞くように、連れて来て説教を聞かせろ」 と言わっじゃごんだど。そしてその話を、おかたさ言うど、 「そがな説教なの、おれぁ聞かねったってええ」 というげんども、ビリビリと聞かせて、大和尚の前さ連(せ)て行って、 「働かなくては食うべからず。夫と一致して働くと楽しみもあるし、自分が我侭語っていらんねから…」 と教えらっじゃなで、感心して、ええあんばいに送った。なまけていると、ええことになんねぇから、なまけないで働かんなねと、大和尚に教えらっじゃど。 |
>>続々 牛方と山姥 目次へ |