7 猿と狐と兎山奥に三匹のケモノぁ住んでいて、その三匹は猿に狐に兎、三匹仲よく住んでいたど。あるとき、三匹は言って、 「人間ざぁええもんだな。人間になるようできねぇもんだか」 というたところが、兎は、 「心さえもきれいで、人をだましたり、いろいろしたりしないごんだらば、同じだべな」 と語っていたとこさ、年寄りのじさまが棒ついで、今にも倒れそうに来たど。そうしたところが親切にして、それを助けて、まず何も食(か)ないで、こがえになって来たべから、おらだ、一生懸命で栗でも拾って来たり、食うものでも、御馳走したりしたらば、人間になられっからと思って、一生懸命で猿と狐は運んで、焚物など焚いて当てたりしていだと。そのうちにとにかく飽きてしまって、 「おらだばり、食せていらんね」 いや、こうだあぁだということできて、いよいよ、 「兎、お前、働きもしないで、兎ぐらいにそんなええ心持たないものはいない、なんて言うから、それは出来たことだ」 そしたば、兎は、 「いよいよになった時は、おれにも覚悟がある」 と。そして今度は、その狐・猿なの、自分ばり食っておじいさんどこ養わないようなありさまを見て、 「おれは、まず行って探してみたったて、そがえに出来ないんだしなぁ、いよいよになったらば」 と思って、火どんどんと焚いて、こいつ、体を進ぜたらば、三日四日は生きているべと思って、その火の中さ入ったど。そしたば、火はパッと消えてしまったど。そしたらば、その年寄りは、 「健気な心だ」 と。その兎を抱いて、ふうっと消えてしまったど。そして今、お月さまさ行って養っているんだど。 んだから、本当に立派な心持たなくてはなんね。 |
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