3 人柱の話

 あるところに、橋を架けなくてなんなくて、荒れ川で橋架かっざぁなくて、みんな寄合いして
「なんとしたらよかんべ」
 と。
「人柱に立つと、そういうときは何かに、上手になるもんだ」
 といった人がいだったそうだ。
「ほんじゃらば、誰か人柱に立て」
 と。誰も立つ人いないもんだ。そしたらば、
「その、語った人は人柱に立て」
 と、こういって、その人はとうとう人柱に立たせらっではぁ、殺さっでしまったど。
 そして何年かもよってから、そこの家では川の向いから、嫁もらったど。そしたば、その嫁は仲々、呼ばらっでも「はい」というだけで、決して喋(しゃべ)んね嫁で、これならば、置いっだたて楽しみもないから、返すと、親が連(せ)て行ったところが、その橋の上に立っているうちに、キジは飛んで来たの、橋の上でギャーッと音立てて飛んだって。そうしたところぁ、狩人に、そのキジは打たっじゃど。そうしたところぁ、その嫁が、
  口ゆえに、みのの川原の人柱
  キジも鳴かずは打たるることなかりけり
 と、その嫁がいうたそうだ。そうしたところが、親は考えて、
「こりゃ、決して余計な口ざぁ立たないで、こういうことを考えるくらいでは、仲々な嫁だ。返すなんていうことはできない」
 と、また連(せ)て来たど。口はわざわいのもとで、その人だって人柱に、口さえも立たねど、なっこどなかったべし、キジだっても鳴かねけば、打たれることなかったべど。
 んだから余計な口ざぁ立たない方がええど。

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