33 屁たれ嫁のあとばなし

 屁たっで、婚家を追い出さっだ嫁は、峠で梨もいで、木綿屋から木綿もらった。木綿屋がもいでもらった梨食ったら、とてもじゃないげんども屁くさくて食んね。くさいくさいなていうもんでない。とてもじゃない。
「あん畜生、せっかく梨もいで食うべと思ったな、屁ひっかけで()んねぐした。ようし、いじめでけんなね」
 て言うことで、追って行って、ずうっと追って来たのを見っだけぁ、
「野郎べら、来あがったな」
 ということで、またそっちの方さ尻むけて、さっきの残り、ぶっ放したれば、まず木さたぐついても、草さ手ぐついても何とも仕様なくてはぁ、一里も先までぶっ飛ばさっで、とても近づかんねがった。
 ほして、ゆうゆうと実家さ帰って来たけど。どんぴんからりん、すっからりん。
 もう一つは、送らっで来たば、三・四人組の神楽いだっけど。
「何だ、お前だ、三・四人でないど、三味線鳴らしたり、笛ならしたりさんねのが。おら、屁で鳴らしてみせる」
「とんでもない。屁でなの鳴らされっこんだら、お前さ何でも欲しいもの呉る」
「よし。ほうか、んだらば、三味線さバチ()つけろ。笛はこっちの方、むけろ」
 ていうわけで、一発やらかしたらば、すばらしい音楽になった。三味線がチャンカチャンカて、ええあんばいに鳴るし、太鼓がトンコトンコトンと鳴る。笛は風でヒュウヒュウて、きわめてええ音した。
「いや、これは大したもんだ」
 日本全国津々浦々まで廻って、相当金もうけて、楽に暮したど。どんぴんからりん、すっからりん。
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