27 ぼたもち

 むかしむかし、殿さまさ、話家として、追っかけて春先行ったれば、江戸ではぼたもちて言うた。ぼたもちだ勘定して、「ぼたもち、ぼたもち」て言うたれば、秋に行ったれば、「オハギ」て言うようになった。不思議なもんだと思って、これは知ったかぶりしねで、これは聞くに限ると思って、聞いてみたれば、
「田舎では、餅とズホ(嘘)は搗き次第、なの、ぼたもちと身上は大きいほどええの何のて言うげんども、これはいわゆる、地方によっては半殺しなても言ってるげんども、すかっと餅に搗き上げねで、いわゆる花言葉だ。春先はぼたんが咲くから、牡丹餅。秋さか、萩のきれいな節には、お萩ていうたもんだ。んだから秋には『オハギ』ていうて、春は『ぼたんもち』だ」
 そう教えてもらったった。
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