17 お恵比須さま

 むかしむかし、恵比須さまていうのいて、この人は雑魚とり上手、百姓の方も上手だった。
 んで、百姓の方ではいろいろなこと教えることやってだ。まだ雑魚とりはそれはそれで教えていた。
 ところがその村に対しては非常に恩恵あったげんども、隣村からは非常にねたまっでいた。
「あそこの部落、あだえ発展していんのも、お恵比須さまのおかげだ。こりゃ困ったもんだ。おら方は、まず火消えたみたいなもんだ。何とかお恵比須さまば、一つ、なき者にしなければ、おら方の部落は立って行かねことになる」
 と、こういうことだ。
 ところが、その部落では、お恵比須さまていうのは、非常に餅好きで、餅たらふく食った後、大根おろし食うそうだ。んで、ある時、お恵比須さまが隣部落さ招ばっで行った。
 ほだごと知しゃねで、餅たらふく御馳走になった。さぁ、大根おろし食うべと思ったが、どさ行っても大根おろし()んね。ほしてあるところさ行って、
「大根一本()でけらっしゃい」
 て言うたらば、
「部落法度で、大根は絶対、あげらんね」
 ほっちゃ行っても、こっちゃ行ってもはぁ、大根がなくて、ほとほと困ってしまった。こんどは腹がぎりぎり痛くなってしまった。ほして、
「仕方ない、水でも飲むか」
 て言うと、水飲みに川端さ行ってみたところが、一人の女が大根洗いしったけど。
「あねちゃん、まず、おれは死ぬか生きっか分んね。腹痛くて、何とも仕様ない。まず餅の食いすぎで何とも仕様ないから、大根かじらせてもらわんねべか」
 て言うたど。
「いや、実は、おれんどこの大根も本数勘定さっでだんだ。んだげんども、正直ここに股大根一本あっから、股の方はあげる」
 て、股の先の方もらって、ようやく腹なおったど。ほして女ばありがたくて、生命(いのち)の恩人だていうわけで、女ば奥さんにして、お恵比須掛けという日には、股大根、今でも上げるていうのが、生命助けてもらった大根であるというわけだど。どんぴんからりん、すっからりん。
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