16 和尚の首つりむかしむかし、薬屋して生計立てっだ人いだった。ところがその薬屋は地元ばっかりで商売なんねもんだから、他国まで行って、ここだらば、置賜とか七ヶ宿あたりまで行って商売してくる。ほして商売して帰ってきて、生計立てっだんだど。ところが、ある人がその薬屋さ教えだんだど。 「お前の留守の間に、どうもお寺さま出入りしている。おかしいぞ」 はいつ聞いっだ薬屋 「なんだ、横着かか、ほに。人ば稼がせて家にいて、お寺さま寄せっだなて、とんでもない話だ」 ていうわけで、稼ぎ行くふりして家さいきなりもどってみたれば、ほに、お寺さまいたわけだ。ほいつお寺さま置いっだなて言うていらんねから、泡くって、ほれ、奥さん隠したど。どこさ隠したと思ったら、井風呂の中さ隠した。はいつ見っだほの亭主は、 「かぁちゃん、かぁちゃん、急に腹いたくなった。まず、お湯湧かして呉ろ。お湯さ入って、それから医者さ掛んなね」 て、まず腹温めてみたら、ええかも知んねからて、「火焚いて呉ろ」ていうわけで、火どんどん焚いて、煮立つほど火焚かせて、上さ、湧かねどなんねから、というわけで、臼ば上げた。ほうしたれば間もなくお寺さま、肥溜さ入った蛙みたい伸びてしまったんだどはぁ。ほうしたけぁ、はいつ見届けて、ほの薬屋、 「何だか、今まで痛いのええぐなった。んではまず商売行ってくっから」 て行ってしまった。 困ったのはその奥さん。人一人殺してしまって、何とも仕様ない。自分が悪いのだから、どさも訴えようもないし、困ったもんだと思って、 「ほんでは、村でも頭のええ人いたから、そこさ行って相談すんべ」 ていうわけで、そこさ行って、 「こういうわけで、まず、おれの不始末で何とも仕様ないげんども、助けてけらっしゃい」 て、相談に行ったど。 「ほだな簡単だ。お前さ惚れでいんな、いま一人いた。あの野郎、助べえなばりでなく、手癖もわるいから、ちょうどええ」 てだど。 「はぁ、ほんでは、なぜすんべっす」 て聞いたらば、 「簡単だ、家さ行って、その人ばたのんで、まず、お茶飲みござしゃいて、そのば、〈ほれ、むかしは搗き米、全部梁ささげたもんだ、虫になんねように〉米さげて呉ろて頼め。ほして死んだば俵さ入っで三つ並べてて、三俵さげてけらっしゃいて頼め」 ところが、「お茶飲みにござっしゃい」て言わっで、つねがね心にくくなく思っているもんだから、いきなりお茶飲みに行った。ほして話して、いろいろお茶のみしているうち、 「お願いあるんだげんども」 「いや、何だ」 「米、ぶら下げてもらいたいんだげんども、虫になっから」 「何俵?」 「三俵だ」 「ああ、ええどこでない」 ほして、 「ほんじゃ、おれちょっと用達し行って来っから」 て言うたれば、米三俵ていうな、ピンと頭さ来たもんだから、親父は自分の家から糠俵もって行って、糠俵と米一俵しかえて(取換えて)来たんだどはぁ。ほしてちょうど米一俵ぐらいな目方あるもんだから、糠俵と米二俵と下げて、ほして和尚入ったのば自分がかついで来た。盗んできたわけよなあ。手癖わるいもんだから。 ほうして家さ来てあけてみて、ぶっ魂消た。中から和尚は蛙のふやけたみたいなになって出はってきた。いや、ぶっ魂消た。ぶっ魂消たげんども、自分がしてしまったもんだから、仕方ない。これは困ったもんだというわけで、またその物識りの家さ聞きにきた。 「ああ、ほだごとあったか、君もあんまり助べえと手癖わるいことさんね」 なて、まずおどさっだくらいにして、 「ええか、あの寺もはぁ、二・三日、寺あけているんだ。三・四日お寺いねくてはぁ、まず、はいつは世間の人みな知ってるはずだ。死んだからいねわけだ。んだからまず、お寺に寄合い触れろ。ほして、お前がみんな集まってから行って、ほして、門のどこさ、山門のどこさ、首結つばいて、ぶら下げておけ」 「ほだごとして大丈夫だべがっす」 「なぜなっか、してみろ」 ところが、ほれ、寄合い触れらっで、みんな御堂さ集まったわけだ。お寺いね。 「なんだて、あのお寺、助べえだ助べえだて話聞いっだ。どこの家の後家かか探しに行ったべ、まず。今夜もいねどれ、まず。寄合い触れておきながら…」 なて言うて、 「あだなお寺だら、ぶん殴ってしまえ、ひっぱだいてしまえ」 なて語った。ほして一番おそく、和尚をぶらさげてやって行った。ところが、その話で沸騰していた。その大将も、 「なんだ、お寺さま、まだいねが、おれおそくなったげんども、どさ行ったかわからねずはぁ」 ほうしたけぁ、ある人がちょえっと小便たれに立って、ぶっ魂消た。山門さぶら下がった。 「大変だ、大変だ」「なんだ」「お寺さま、首くくりした」「はいつは、なしてだ」て、皆。 したれば結局、 「あだなお寺、ぶち殺してしまえ、あだなお寺、追 ていうわけで、二人とも何とも、難なく通りすぎだど。どんぴんからりん、すっからりん。 |
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