9 虫送り

 むかしむかし、源平時代に、斎藤別当実盛ていう人いだんだけど。
 源平の合戦の折に、斎藤別当実盛という人が稲株さ引っかかって、ほして転んだ。ほこ源氏の侍に打だっだ。んだもんだから、稲株ささえ上がんねど、殺さんねがったていうわけよ。その人、百姓をうらんで、すばらしい稲虫、いわゆる(ずい)虫とウンカが大発生して、餓死する寸前まで行った。
 ほの話がずうっと百姓から百姓さ聞えてきて、ほんではというわけで、稲虫流していうのした。というのは、斎藤別当実盛の格好を藁で作って、そして、供養をしながら、
「稲虫出さねようにしてけらっしゃい」
 ていうわけで、稲虫を部落の人、みんなして出て、稲虫流しという行事、それからやった。
 で、ここでも稲虫流しという地がある。今、梅本沢というげんども、昔の人は稲虫流しといっていた。
>>夢のほたる 目次へ