8 夢のほたる

 むかしとんとんあって、ある部落で夜寄合いをした。今みたいに電気ないもんだから、行灯で、あるいは焚火でタイマツなど焚いて、寄合いした。
 ほだえしているうち、日中の労働が激しがったがして、一人の人がうとうとと、そこさ眠ってしまった。ほしたら、何だか鼻のあたりからほたるのような、ぽかっと飛んで行った。
「あらら、ほたるみたいな、ぽかっと飛んで行った」
 と思って見っだ。
「へえ、不思議なこともあるもんだ」
 まぁ、一(とき)ほどしたら、そのほたるが帰ってきた。そして鼻の中の方さ、ちょろちょろと入って行った。そしてムニャムニャ・ムニャと起きた。
「君、何か夢見ねがったが」
「いやいや、夢見た。こういうところさ行ったら、すばらしい穴あって、穴の中から入って行ってみたれば、金銀財宝、すばらしいもんだけ」
 て。
「いや、はいつ夢」
「夢っだな、こりゃ、おれ眠ったんだれば、あんな夢見たことない」
 ほしたれば、その人ぁ我慢さんねくてはぁ、ほっからすぐ走って行って、ほこ探してみた。やっぱり穴あっけ。行ってみたれば、やっぱり話のとおり金銀財宝すばらしくあっけ。よしこれだ。というわけで、取りはじめたれば、崩れはじめた。いや崩っで崩っで、何とも仕様がない。こんど爪ではだげて、逃げんなね、いや、だんだえぎっつくなって、何とも仕様なくてはぁ、もう手など痛いんだか、何だかわからね。棒みたいになってはぁ、ガツガツ、ガツガツかっちゃいだ。最後の固いなものあって、何とも仕様ない。はいつ、命がけでワッと押しあげたれば、ヒョコッと出はったのが、自分の家の藁打ち石、押し上げて出はったけど。
 ほして手見たらば、手には爪さっぱりないがったど。指まで減ってだ。んだから、ずるいことすっど爪抜けんぞて言うな、ほっから来たった。どんぴんからりん、すっからりん。
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