7 沼の台小町(蛇聟)むかしむかし、山形の在に、沼の台というところあった。その沼の台小町といわっだきれいな娘いだんだったど。で、夜な夜な、娘さ遊びにくるお殿さまいて、そして家でも心配して、 「お前、誰がお前さ遊び来んなだ」 て聞いたれば、 「山形の家老さまだ」 「ほうか、名前聞いたか」 「名前聞かねげんども、立派で、普通の町人百姓相手とちがう。きっとあれは家老さまにちがいない」 「んだげんども、ほだな、名前もきかねで、将来一緒にもならんねようでは…」 て言うわけで、 「ほだら、ほの袴さ、針さ糸通して、はいつ袴さ刺してやれ。そしてその後行ってみろ」 ていうわけで、次の日なってみたら、山形の方さ行かねで、山の方さ、ほの糸が引っぱっていだっけ。おかしいおかしいて行ってみたれば、土手のかげから聞いっだらば、蛇の親子の話声が聞えっけ。 「お前、なんぼなんたて、生じっか蛇の分際でありながら、なんぼきれいだて言いながら、ほの、小町娘といいながら、人間さ恋するなて、もっての他だ。そのお前の体、膿んできてはぁ、錆の鉄の毒まわってきて、まもなく分かんねどらはぁ」 ほして、 「おれは後とり作ってきた」 「後とりなの作ってきたって駄目だ。人間は賢こいからって、はいつ堕ろす薬知っていんなだ。春は桃酒、夏はマタタビ、秋はホオズキ、冬はフキの根。これを使うと、たちどころに、ほだな皆堕っでしまう」 ほして、その娘が妊娠したのば、そいつの何かで堕とす。ところが蛇がそこでもだえ死んでしまった。 その娘がたとえ蛇といいながら、おれに対しては何日かの恋人であった。かわいそうであったというわけで、杉の木一本植えて、ほして供養したど。 その杉は今でもあって、麝香じゃこう |
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