5 一つ目

 ある時、ある部落の若者が山さ柴刈りに行った。ところが隣の国の峠のあたりまで柴刈りに行ったれば、やっぱり向うでも柴刈りしったのいだっけ。ちょぇっと見たれば、(まなぐ)一つだけど。
「あららら、一つ目だりゃ、おかしいな。一つ目の人見てきた」
 て、部落さ来て語ったれば、
「べらぼう。ほだな一つ目の人なて、いるもんでない。めっこか、たっこでもあんべな」
「いや、んない。一つ目見て来た」
「んだらば、また、いつかも知んねぇから、んじゃてみろ」
 ていうわけで、友だちとほこさ行ってみた。ところがやっぱり、はいつぁ一つ目の人だ。ほしてほこで、
「何んだ、お前、目一つしかないのか」
 て聞いてみたれば、ぶっ魂消たけど。
「なんだ、お前だ、目二つあんの、おら方皆一つずつだ」
「ほだごどないべな。人間はみな二つだべな」
 ていうごどになったって。
「んじゃ、おら方の国さ、んじゃてみろ」
 て行ったれば、魂消た。途中まで行ったれば、
「あららら、目二つの人きた」
 て、向うでも魂消たけど。
「目二つの人来たぜ、みんな村中出て見ろ、まず」
 ていうわけで、村中の人が出はって来て見たって。したけぁ、
「かいつぁ、珍らしいから見せものにするにゃ、おさえろはぁ」
 て、二人はほこでおさえらっだけどはぁ。
「くそ!ここでおさえらっでは、家さ帰らんね、まず」
 ていうわけで、一生けんめいもがいだど。したれば、
「なして、ほだえ寝相わるくして寝てんのだ」
 て。結局、はいつぁ夢だったど。どんぴんからりん、すっからりん。
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