2 一心は岩をも通すむかしむかし、唐の国に一人の若者がいだった。その若者が弓とっても、百姓しても村では指折りの若者だった。ところがある時、ふとしたことから、 「いつか虎打ってみたい、弓で何とかして、虎打ってみたい」 と、念願しった。なかなかその機会にめぐまんない。 ある時、弓持って、天気のええ日、ずうっと山裾の方行ったれば、虎がねそべっていたっけ。臥牛というから、牛が寝っだようにねそべっていた。よし、ここぞとばかり、ほこさ近寄って行って、ほして満月の如く弓をひきしぼって、ふっと放った。ほうしたら、果せるかな、そいつぁズボーッと虎さ刺さったが、虎は動かない。よし、仕留めたていうわけで、行ってみたれば、はいつは虎に似た岩だったて。ほして、 「はぁ、こりゃ、虎だと思ったら、岩だった。おかしなこともあるもんだ」 と思って、戻り帰ってまた打ってみたげんども、後は矢は立たねがった。んだから、虎打ちたい、虎打ちたいと考えて、一心になって打ったもんだから、一心は岩をも通すて、ほの時から言った。そういう風になれば、石に矢の立つためしありということで、まず、ほこらここら評判になったった。どんぴんからりん、すっからりん。 |
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