26 夜這い話

 あるどこのじんつぁ、若いとき、お寺さまには女中さんがいだわけだったのだなねぇ、ほの女中さんさ夜這いに行って、ほしてはぁ、うとうとと眠ってしまって、お天道さま上がったんだけどはぁ。
 かならず出はってくるにゃ、座敷通って出はらんなねわけだど。んだど、座敷ほれ、お寺さんみな起きてから通って出はるわけに行かねから、
「困ったことはじまった」
 と思ったら、ほの女中、掛け布団さ、くるくると巻いだけぁ、(たが)って、干すふりして、表さどいら投げらっだったていうんだな。
 別な人が、年中行ってるもんだから、お寺さまの、何ぁどこにあっかまで分っかったはぁて。法事菓子は茶箪笥さしまっておくこと分っかったずも、ほれ。夜這いに行ぐ前に、法事菓子御馳走なってから行ぐがったど。
 そこの分家のじんつぁは、〈うさぎ〉て名付けらっだったなて。お寺さまのきざはしの脇に相当高い石段ある。あそこお寺さまに()われっど、あそこから飛び降りるんだずも、めんどうくさいから、ぴょこんと。
「あらら、怪我しねべがぁ」
 て、村の人だ、行って見でっかったど。んでも次の日なっど、また来っかったから、まだ追って行ぐど、ぴょこんと、また飛び降りるんだど。ほんで〈うさぎ〉て名付けらっだんだど。
 宝沢(山形市)あたりから、人世話なんていうのがいて、口銭(こうせん)とりして歩ぐがったど。糸とりにきて仲よくなっど、表で咳ばらい二回すっど、誰、三回すっど誰どかて、唯も出てこらんねから、水投げて、水汲みのふりして出はって来っかったど。手桶もって、下町のゴロの水汲みに行くふりしたもんだど。
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