17 目なしという魚

 ある百姓の人が、百匁ローソク拾ったったど。何だかわかんねぇし、ほこらここらで一番知ってる人は、お寺さまなもんだから、お寺さまさ聞き行ったど。
「こういうふうな、拾った」
 て。
「はいつぁ、きっと目なしていう魚だ」
 てだど。
「かぁ、魚か、あいつぁ」
 見たことないんだずもはぁれ、
「んでは、御馳走になれ」
 ていうわけで、刺身して御馳走なったわけだど。
「何だかうまくないげんど、こりゃ。魚でいうから」
 ていうわけで、ほしたけぁ、お寺さまさ行って、
「何だて、生臭くも何ともない魚で、あっじぇげだな、おかしげな、ポクラポクラて…」
 ていうたど。
「骨一本あっけ」
 てだど。ローソクの芯。
「はいつぁ、(なん)たけ」
「くたくたすっけ」
「はぁ、なんだべ」
「木綿糸みたいな骨だけ」
 ていうたど。
「ほんでは、ローソクだ、ほりゃ。目なしていう魚でない。ローソク、お前だ食ったんだ」
 て、お寺さまよ。
「ほんでは、ローソクざぁ、火とぼすもんだ。腹の中さ行って焼けたりすっど、なんねから皆水さとびこめ」
 ていって、寒中みな川の中さ、じゃぼじゃぼ入ったていうなだな。
 どんぴんからりん、すっからりん。
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