10 鹿毛と熊毛

 ある村に非常にきれいな娘いて、ほの娘がかわら毛だていう話あったんだど。
「いや、ほんねべな」
「ほだべな」
 て、若衆だ論判になって、
「んだらば、お湯さ入っどきみんなして見に()んじゃ」
 ていうわけで、隠っで見っだんだど。ほうしてお湯さ入っどき、つやつやと真っ黒だずもほれ。
「ほれ、真っ黒だどれ!」
 て、みないうたんだど。ほしたらば〈かわら毛だ〉ていうた人だよ、
「あいつぁ、しかけ(仕掛け)だまなぁ、しかけあんなだまなぁ」
 ていうたど。ほしたれば、その娘ぁ、
「鹿毛でない、熊毛だ」
 ていうたど。熊の毛だったど、そいつぁ。
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