9 小白川の地蔵さま

 小白川(山形)にある夫婦がいて、少し離っだところにとうちゃんが稼ぎに行ってだど。ところが、そのおかちゃんばりのどこさ、六部が泊った。ほしていろいろ話になって、
「ええ体格でござるな」
 だの、何だのて、まず、話になった。ところが、
「奥さん、実は困ったこと、おれ、あるんだ。まず大きい過ぎて相手になる人がいねんだ」
 ていうわけだと。
「はぁ、んだら、おれ聞いっだ話だげんど、大きい人と相手になっどきには、麦ば煮立てて、麦のり()って、麦のり温めて、そいつさ浸してすっど、用()すいそうだていうこと聞いっだ」
 ていうことだど。ほして二人は、ほれ、麦のりとって入れてみたら、ソロッとええあんばい入ったど。ほうしたけぁ、
「まず、こだえ、ええことないがった」
 ていうわけで、その六部さま、すばらしく感謝して、
「んじゃ、来年また、おれ、ここ通っから、来年まで()ででくろ、また来っから」
 ていうわけで、言い残して出かけたわけだど。ほうして隣の隣の部落あたりさ行って、誰さも()ね約束したんだげんど、あんまりうれしくて、ほこで話になったずも。ほれ。ほして稼ぎ行ってるおっつぁまが聞いてみっど、何だか自分のかかみたいだでぇ、一人ばりいた、こういう女で、て聞くどよ。
「何だ」
 ていうわけで、ごしゃげではぁ、いらんねくて、ぐらり家さ来て、おっかさ、
「この一升瓶さ、一升五合の酒買ってこい」
 ていうたど。
「何だべ、とうちゃん。一升瓶さ五合買ってこいだらわかっだげんど、一升五合ざぁ話あるもんであんまいな」
 たれば、
「なんぼも入る。麦煮立てて麦のりとって、麦のりさ酒ひたすど、なんぼも一升五合入るべ」
 はいつで、かか、分らっだと思ってはぁ、自殺するんだどはぁ。ほしてはいつ、こんど一年過ぎて、坊さま、そこの土地さ来てみたればいねんだけどはぁ。
「なしていねべ、こらぁ」
 て聞いてみたれば、
「何ても、六部さま泊って、ほの六部さまと関係もって、亭主はヤキモチやいではぁ、まず何とも仕様なくて、自殺したんだどはぁ」
 ていうたんだど。
「ああ、ほんではおれ悪れごとした」
 ていうわけで、ほの人が立てて呉た地蔵さまが小白川の地蔵さまだど。んだから小白川の地蔵さまが非常に道祖神さまに似てる地蔵さまになってるんだど。
>>ゆき女 目次へ