4 化け石むかし、この生居(上山市)のしくじりさ、〈化け石〉ていうなあった。ちょうど高さは二米ぐらいで、上の方五、六十センチぐらいの石で、夜な夜な、ほの石が化けて、子どもをおどしたり、ほら、持ちもの取ったり、いろいろすっかったど。ところが、あるとき、庄屋の権左衛門が町さ用達しさ行って、したれば、 「お頼申します。お頼申します」 て。 「ふしぎなこともあるもんだ、夜中に女の声する」 て、ちょぇっと振り返って見たれば、きれいな女だったって。ほして権左衛門も生身 「待て、待て、これは何か妖怪変化、ここは特に〈化け石〉て言 ていうわけで、まず心落着けて、どかっと道端さ尻したえで、煙草入れ出して、一服吸い始めたど。したれば、その女は、見たれば着物の縞まで、すかっと、真暗いどこに見えるていうんだな。 「こだなわけない」 ていうわけで、悟ったんだど。ほうして、何だか背筋がぞくぞくってするような気して、なれ、 「はぁ、これは、妖怪変化、狐か狸か、何かでないべか」 ていうわけで、したれば、 「実は、おれの子どもが増 て、こういうわけだったど。 「よし、めぐんでやる」 ていうわけで、いそいで家に帰って、ほして家の若衆ださ、米一俵(昔は三斗七升だったど)、三七の米全部炊かせて、ほれ、ヤキメシ握って、ゴマヤキメシ、キナコヤキメシ、ほうして持って行ったれば、ほの石のかげから手ぁ何十本となく出て、たちまち食ってしまったんだどはぁ。ほのヤキメシ。ほうして、 「庄屋さん、庄屋さん、どうもありがとうございました。お礼に宝物の石呉 て、石ナンコ二つ呉でよこしたんだど。こいつは〈子持ち石〉ていうて、毎年一つずつ子産 「ほだな、百姓、町人ざ持たせておかんね、おれんどこさ上げろ」 ていうわけで、上の山の殿さまに持って行がっだんだど。 持って行ったげんど、一晩のうちにちゃんともどってくるんだど、ほの石ぁ。なんぼ持って行っても戻ってくる。殿さまも気味悪くなってはぁ、書付け一本呉ではぁ、〈生石大明神〉ていう書付け呉て、ほしてはぁ、返してよこしたんだどはぁ。今でも、大事にしていて、生石というのが、訛って、〈生 生居部落ていうのが、元、〈生石〉というのの名だったど。生居の由来だど。 どんぴんからりん、すっからりん。 |
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