28 粗こつ者突飛な、栄三あんにゃ、あした休み日だから、お前も字上手になるように「亀 岡のお文殊さまさお詣りして来い」て言わっじゃど。ほして朝げ早く行ぐど、日 帰りしられっから行ったついでに、赤湯さ行ってお八幡さまお詣りして来いて、 ほして夜のうちにヤキメシを握ってもらって、お賽銭をもらって、準備しったん だって。ほして、「お前、いつも褌、ろくなものしないから、特別に赤い褌を買って来て呉っじゃ から、ほいつして行げ」 て、赤い褌をもらってな、そいつ枕元さ置いて、暗いうちに出かけたていうん だ。ほして、 「ヤキメシはここさ置くぞ」 て、その脇さ包んでもらったな、そいつ背負って出かけたど。大抵こんど赤芝 通り抜けて、舘山さ行った頃になったら、夜明けて来たから、一つ赤い褌をみん なに見せてやろうと思って、尻をぐらり高々とふったぐった。みんなのぞいて見 て笑ってる。 「はぁ、おれの赤い褌、目についたな」 と思って、行ったていうなだ。ほしていよいよ亀岡さ行って、お文殊さまさ行っ て、 「こいつは小遣いだぞ」 て言うて、五十銭、 「こっちはお賽銭だ」 て、二銭銅貨どかてもらって行った。そいつ間違って五十銭銀貨の方お賽銭箱 さ入(い)っでしまった。そしてそこでお詣りして行って、こんど赤湯さ行って、お八 幡さまさ行ったんだど。ほして茶屋さ尻かけてヤキメシ昼間になったから食うが と思って風呂敷ひろげて、ゴロゴロと風呂敷といたところが、ヤキメシだと思っ て背負って行ったの、漬物石だど。そいつぁゴロゴロ、ゴロゴロ転んで行って、 脇にあった酒ガメさぶっつかってしまった。ほして酒はみなこぼっで、いやぁ怒 らっで、怒らっで、銭置けて言わっで、ほして銭出すかと思ったら、お賽銭二銭 持ってだきりで、小遣いの方はなかった。ほしてはぁ、困ってしまって、あやまっ てあやまって、尻ふたぐって、 「なんだ貴様、褌もしないで、尻ふったくって、何処の者だ」 て言わっだごんだど。ちょっと見たところが褌しったと思ったら、忘せてしな いで行ったんだけど。道理で途中でみんなおれどこ見て笑うべと思ったど。んだ からそこらさ行くどきは、よっく気付けて、忘れものしないようにアパタパて間 違ったりしないようにしなねけど。どろびん。 |
(宮下 昇) |
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