25 鼻高小槌

 団子こさってだな、コロコロ転んで行って、孔さ入って行って、そいつ追かけ て探ねて行った。「団子どの、団子どの、どこまでござる」
 そしてどんどんとねずみ孔さ入って行ったもんだな。コロコロと。そしたらね ずみの家さ行った。そして、
「いま、団子ここさ転んで来ねがったべか」
 て聞いだんだな。そしたら、
「いや、転んで来たった。んだげんど、あんまりうまそうな団子なもんだから、 みな御馳走になった」
「さぁさぁ困った。んだげんど仕方ない、仕方ない。お前の方も腹減っていたべ から、仕方ないごで」
 と。ほして帰んべと思ったら、お土産もらったんだな。ほうしてそのお土産が 打出の小槌だったど。ほうして打出の小槌は願いごとは何でもかなう打出の小槌 だど。
「んだから、自分で願いごとあったら、こいつ振って願え」
 と言わっじゃ。ところがその男は鼻が非常に低かった。鼻びっちょな男だった。 と鼻伸ばしたくて、
「おれ鼻伸びろ、おれ鼻伸びろ」
 て振ったていうんだ。ほうしたらグングン、グングンと伸びて行ったていうん だ。
「いや、これは面白い、なんぼ伸びっか、一つ思い切って伸ばしてみんべ」
 と思って、
「おれ鼻伸びろ、おれ鼻伸びろ」
 ていうたところが、天竺まで行ってしまった。ほうして天竺の家さ行って、天 竺の家の炉端で当って芋あぶりしったところさ、何かモクモク、モクモクと出て きた。
「何か出て来たな、何だ何だ」
 て見たら、茸みたいな出てきた。ほうすっどそいつさ、
「火箸さしてみろ」
 て、刺したていうんだ。ところがその下にいた奴が「痛い痛い」。火箸ささっだ から、痛いわけだ。こんどやしゃながって、
「おれぁ鼻縮め、鼻縮め」
 て叩いたていうんだ。ところが上さ火箸ささってで、ちぢんで来ないから、体 の方ぁ天上さ上がって行った。お天竺まで上がって行ったていうわけだ。「痛い痛 い」て泣き泣き行ったところぁ、ちょうど天竺の家の囲炉裏の下まで行った。ほ うして、下で、
「いたい、いたい、おれ鼻から火箸抜け、火箸抜け」
ていうたもんだから、
「何だ、誰かの鼻だて言うどれ、そんがえな火箸さして悪いごで」
 て、その火箸を抜いた。ところがつん抜けて落ちて行ったど。ほうしてはぁ、 下さ来て、天竺から下まで落ちたから、ビチャンコにつぶっで死んでしまったけ。 んだからなんぼ願いごとかなうったって、そのような馬鹿な願いごとするもんで ないけど。どろびん。
(宮下 昇)
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