17 糠福と米福

 糠福と米福といたけど。姉の方は米福で、とってもきれいな気立てのやさしい ええ娘だったど。糠福はその妹で、あんまり器量のええぐなくて、気立てもええ ぐない娘だったど。して糠福のお母さんがいま居るげども、米福の継母だったど。 それでことごとに米福をいびっておったど。
「山栗拾いに行って来い」
 て言って、袋を持たせられる。そうすっど米福の袋は底さ孔あいっだな持たせ らっだ。糠福の袋は孔のあいていない立派な袋を持たせらっじゃ。拾っても拾っ ても米福んなさは溜んねがった。糠福は袋さいっぱい拾って帰ってくる。そうすっ ど家さ来て、
「お前は栗拾って来ねから御飯食せらんねぇぞ」
 て言わっで、そしていじめられっど。
 そしてある日、山さ柴取りに行ったどこさ殿さまがお通りになった。そして、
「召使いを一人欲しいんだが、なかなかええ娘いたから、お殿さまのどこさ来る ように」
 て、家来に申付けて行ったど。そしてその御家来がその家さ行って、糠福と米 福の家へ行って、お母さんに、
「殿さまの召使いに召出されっから、二人づれで来い」
 て言うたところが、お母さんは、
「この米福なて何も分んね奴だから、こんな者連れて行んことないから、糠福だ け連れて行く」
 て、言うて一人連れて行ったど。そして米福は家に一人しょんぼり残っていた どこさ、年寄のおじいさんが来て、そして、
「お前も行ってみろ」
「おら、着物もこの通りボロだし、髪もこんなにボサボサだし、とても殿さまの 前さ行けねから、留守番してっからええ」
 て言ったげんど、
「それはみな、おれ持って来た」
 と言うて、新しい着物のええなと着せかえて、ほしてお化粧して呉れて、髪も ととのえて呉れて、連れて行ったど。そして行ったら一目見て、早速殿さまはこっ ちの娘ええと、そうして糠福が、どんな化粧して、ええ着物きせて連(つ) っで行がっ だげんども、落第してしまった。そしてお召かかえなんねがっだど。んだがら継 子はいびるもんでないど。心だけさえも立派にしてっど、そういう風に立身出世 などできるんだから…。
(宮下 昇)
>>米沢市簗沢の昔話 目次へ