16 鶴女房山道通りかかったら、弓を受けて傷付いっだ鶴が倒れ苦しんでだ。そしてそれ をもって来て、手当てをして返してやったんだど。そしたらある日、とてもええ 若い娘が来て、そこのお嫁さんにして呉れって、一人者だったから、「こんなアバラ家でも良かったら、嫁になって呉れっか」 と寄せたど。そして、 「おれ、機織られる」 「なんだ、お前、機織られっか、ほんじゃ織って見て呉ろ」 て、機織らせたど。一反織って、 「町さ、こいつ持って行って売って来てくろ」 て言わっで、持って行ったら、いやとても高く売れた。帰ってきたら、また別 な機織ってくれた。ほうして、なんぼもなんぼも機織ってくれて持って行く。だ んだん行く度に高くなって、とんな大金持になってしまった。 「一体、なじょして機織るもんだか」 機織ってっどこは絶対に見ないで呉ろと頼まれていたげんど、決して見ないと 約束っしたげんど、あまりにも上手にええ機織るもんだから、こっそりと見てや ろうと思って覗(のぞ)き見 した。ところが鶴だ。自分の毛を一本ずつ抜いてそいつで織っ てだ。もうすでに毛無くなるくらいに赤むけなるくらいまで抜いて、そして織っ てだど。そうしたところがその機織出来上がっど、 「お前、おれの機織り見たな」 「実はお前に見ないと約束したげんども、あまり上手にええ機織るもんだから、 どうして織るもんだと思ってのぞき見したんだ」 と言うたところが、 「実はおれは鶴だ。あのときお前に助けられた鶴だ。御恩返しに鶴の毛抜いて、 お前さ織って上げだんだ」 と言って、 「もう見付けらっじゃ限りは、ここに居っこと出(で)ない から…」 「もう、しばらくここに居てくれ」 て頼んだげんども、とんでどこかに行ってしまったけど。どろびん。 |
(宮下 昇) |
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