13 猿聟(さるむこ)

 田さ水掛んねで困っていたどこさ、猿が聞きつけて来て、
「じんつぁ、じんつぁ、何しったどこだ」
 て言うたんだ。そうしたところが、
「おれだと、される」
 ということになったんだど。んだから、藁をもつかむ気持ちで、
「猿などに、こだなこと出っこんだべか」
 と思ったげんど、困ったあげくだからな。
「ほんじゃれば、お前、なじょかしてみっか」
「おれぁ、ええげんども、おれにも条件がある。娘もってだな、かか欲しいから 呉んねが」
 水掛けたいまんまに、
「あまりええ、あまりええ」
 なて、ついふらふらと言ってしまったど。そして言うたどころが、まんまんと 水掛かった。こんど、じじ困ったわけだべ。朝げンなっても起きらんねわけだ。 ほしたらば大きい娘起こしに行ったわけだべ。まずな。
「じじ、御飯(おまま) 食うぁええげんども、われぁ頼みも聞いて呉れねが」
「おじんちゃの言うことは何でも聞くどこでない」
 ては言うたげんども、猿のおかたになって呉んねがて言うたところぁ、
「嫌(や)んだどごでない」
 て言うた。二番目のもその通りだ。そして末娘がな、その話聞いたところが、
「いや、そいつだれば、おら行くべ」
 ということだ。そいつが賢い娘だていうどこだ。そして猿のおかたに行った。
 里帰りのときに、実家さ餅、お土産に持って行ぐ。んだげんども家のじじは臼 さ入った餅でないと食ねと、臼がらみ背負わせた。そして山道通りかかって来た ら、
「あの桜の花美しいから、取って呉ろ」
「おれは木登り商売だから、臼など降ろすのめんどうくさい」
 て、臼背負ったまま登って行ったなだ。そして「こいつか」て言うたら、「いや、 そいつでない」「ほんじゃ、こいつか」て登って行ったら、
「いや、どうせ取ってもらうんでは、もっと上んなええ」
 また登ったら、
「いまちいと、その天上んな、なおええ」
 と、こういうわけだ。そしてバリバリと落っで死んでしまった。そして娘が帰っ て来たど。
(赤木)
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