8 食わず女房こういう部落に、一人者で稼ぐ者がいだったそうだ。そしておっかに飯食(ままか)せるい たましいわけだ。んだもんだから、なるだけは飯食ねおっか貰いたくていたてい うんだ。そして飯食ねおっか貰いたいていたところぁ、どっから聞いてそこさ仲 人ぁ来たか、仲人来たて言うんだ。「いや、ええおっかいたから、貰わねか」 て言わっじゃていうんだ。そうすっど、 「いや、そんじゃ貰うべ」 そして貰って見たところぁ、なかなかええおっかだて言うんだ。仲々ええおっ かだからいたところが三日たっても四日たっても飯食ねていうんだ。そうすっど 喜んでいたていうんだ。んだげんど三日や四日だら我慢しているていうことも出 来っけんども、五日、十日、十五日と日は重なって行くに、飯食ねもんだから、 こんど野郎もはっと思って気ぁついだって。 「ほんじゃ、こりゃただ者でない」 て思ったから、こんどは稼ぎに出たふりして台所の二階さ上がっていたていう んだ。ほうしたところぁ、親父は稼ぎに行った。その間に、まいどの味噌煮釜さ 一つ炊いて、ヤキメシ拵え始めて、ここら一面並べだど。そして何するもんだべ と思って見っだところが、頭の髪の毛パカッと割って、ザンギリかぶった、角生 えっだ鬼だて言うんだ。ほうすっどそのヤキメシ、片端からみな入っで、ストン と平らげた。そして平らげたどこ見っだ。 「こりゃ、飯どこでない、おれも食れる」 て、二階から這い出して逃げたところが、追っかけらっじゃ。そして追っかけ らっで逃げるは逃げる。どこまで逃げて行っても隠れ場所もない。何もないもん だから、息の続く足のある限り逃げて行ったところぁ、田んぼにヨモギと菖蒲が 生えっだ。ちいとばりの薮あったていうんだ。そこさ逃げて行ったところぁ、ス イッとそいつは逃げて行ったど。そうしたところぁ鬼だったていうごんだな。ほ んで五月の節句に菖蒲とヨモギ立てろざぁ、そのいわれだていうことだ。どろび ん、三助、三助頭さ火がとんだ。 |
(遠藤富雄) |
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